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「ピンチはチャンス」は本当か?

「ピンチはチャンス」

そんな風に言われることがあります。

でもそんな風には思えないこともあって、じゃあ、ピンチはチャンスではないのかというと、そうとは限らなくて、ピンチを大きなチャンスに変えているような方もいます。

今回は、そんなピンチをチャンスに変えている人が何を思っていたのか、また、ピンチになった時に何をどう考えたらいいのか?ということについても考えてみたいと思います。

トヨタ自動車の社長が語った言葉

トヨタ自動車の第11代社長の豊田章男さんとメジャーリーガーとして数々の記録を打ち立ててきたイチローさんが対談をしたことがありました。

その中でイチローさんは、豊田社長がピンチのど真ん中に飛び込んでいって、結果的にそれをチャンスにしていることについて、どうやったらそんな風に(ピンチの中に飛び込んでいって、それを最終的にチャンスに変えることが)できるのでしょうか?と質問をしました。

すると、豊田社長は、イチローさんが「ピンチはチャンスだってことってよく言われるじゃないですか。でも実際のところ、ピンチはピンチじゃないですか。僕なんかまさにピンチはピンチの状況が続いていて。」と語ったことに対して、それを「ピンチはピンチ」と肯定された上で・・・

ただ、「僕がピンチはピンチだと言ったらお仕舞でしょ。だから、あえてピンチはチャンスだと言っているんだと思います」と。

豊田社長は、ピンチの時は、あれこれ考えずに、自分はこうだと思った方向にとにかく進むことが大事だと言います。

それが間違いだったら、そこで気づいて直してゆけばいい、と。

そうやって、最初に動き出した自分の行動を最終的には正解に持って行けばいいのですと、語られていました。

そうやって少し動くとまた違ったものが見えてきたりすることがある、と。

そして、そうやって動き出していることが結果的に、(豊田社長が)ピンチをチャンスに変えているように見える理由なのでしょうとおっしゃっていました。

ただ、いずれにしても最初からピンチの時に、チャンスの光景が見えているわけではないそうです。

一方のイチローさんも、数々のピンチを乗り越えてきた方で、そのプレッシャーは計り知れないものがあったはずだと思います。

イチローさんはその重くのしかかるプレッシャーを「どうしたって、逃げられない。なら、自分で(プレシャーを自分自身に)かけようと(思った)」(NHK プロフェッショナル仕事の流儀 「イチロー・知られざる闘い」)

イチローさんはまた、戦い続けることについて、何か光が見えているわけではなく、先には何も見えず、真っ暗だと。

ただ、「もがいて苦しんでいると光が見えてくると僕は信じている。何となくいつか光が見えると思っていたら、一生見えない」と語っています。(NHK プロフェッショナル仕事の流儀 「イチロー・知られざる闘い」)

ピンチはピンチだけど?

豊田社長のピンチの時に「チャンスの光景が見えているわけじゃない」という言葉のように、「ピンチはチャンス」とは、ピンチがやってきた時点でそう思う方は少ないのかも、知れませんね。

サッカー日本代表として「国際Aマッチ出場数最多記録」を作った遠藤保仁さんは自身の著書の中でこんな風に語っています。

「ピンチをチャンスとは思わない。ピンチはピンチ。ピンチの後もずーっとピンチかもしれない。

でも、そこで諦めてしまったら、それまで。乗り越えて、さらに乗り越えて、その先にあるチャンスを掴むからこそ、達成感があるし、面白いんだと思う。」(白紙からの選択 p.187 遠藤保仁著 講談社)

白紙からの選択 遠藤保仁著

窮地に立たされてやっと変わろう思えた

僕自身は、やはりピンチをチャンスとは思えませんでした。少なくとも以前の自分にとって、ピンチはピンチでしかなかった。

ただ、そんなピンチというか窮地に立たされてやっと、これではいけないと、危機感を感じてやっと、自分が変わらないといけないんだなと、そう思ってきた自分がいて。

自分を変えるなんてことは難しいことだし、できれば避けて通りたいことだと思うんです。

だけど、僕の場合、自分を変えようと思えたのは、そういう、言ってみれば消極的な理由でした。

「ピンチはチャンスです」

とは誰かに言うものでも、または誰かに言われて気づくものでもないのかも知れません。

ただ、僕自身は、ピンチに陥った時、これはチャンスだとは思えなくても・・少なくともそのピンチを何かプラスの方向には変えたいと思うのです。

ピンチは何を思ってみたところでピンチなわけで、だけど、どうせピンチがやってきたのなら、苦しみながらも、そのままでは終わらせたくはないというか。

ピンチというのはまた、いつも自分にとっては本気になるスイッチというか、本気にならざるを得ないスイッチだったのかも知れないなと、そう思うことがあります。

それは僕が呑気だったのかも知れないし、ただ、変わりたくないだけだったのかも知れないし、ただ、苦しい思いをしたくないだけだったのかも知れないし・・

ただ、本気になるスイッチを自分以外の何かに押してもらってはじめて、ここで負けてたまるかと思えることもあった。

やるはめになったことが自分を変える。

何だか消極的な動機ですが、僕自身は、いつもそんな、やるはめになったことが自分を変えてくれたように思っています。

ピンチをピンチで終わらせてたまるか

そんなことが続いてからは、ピンチの時は、向き合うしかないと、そう思うようになりました。

どうせ逃げられないのなら。逃げられるのであれば、すぐにでも逃げますが・・逃げられないからピンチなのであって。

だから、向き合うしかない。

でも、どうせ向き合うなら、それを何か自分のプラスに変えたい。

以前にも書かせていただきましたが、どうせ転ぶなら、そこに落ちているものは何でも拾って立ち上がってやろう、と。

ただでは転ばないし、ただでは起きない。

最後は、ピンチをピンチで終わらせてたまるかという思いがピンチの時の自分を支えてきてくれたのかなと、そう思うのです。

ピンチはピンチ・・・だけど、それがきっかけでやるはめになったことが自分を変えてくれることがあったり、自分に何かを気づかせてくれることもあったり。

勿論、できれば、ピンチはない方がいいに決まっているわけですが、やってきたものは、そして、逃げられないものであれば、それをできれば、結果的にはチャンスだったと言えるようになりたい、ピンチの時はそんなことをよく思います。

一歩進めば、その一歩の分だけ違ったものが見えるようになる

冒頭でご紹介させていただいた豊田社長の言葉にもありましたが、ピンチの時はあれこれ考えずに、こうだと思ったことに進んでゆくことが大切なのかも知れません。

考えるより、動いてみることが大事・・・というわけですが、考えるなら、動きながら考えた方がいいのかも知れません。

人は、考えてから動こうと思うと、不思議と動けなくなるからです。

また、人はじっとしたまま考えると、考えがどうしてもネガティブな方向に傾きやすく、考えるほどに「できる理由」ではなくて、「できない理由」が浮かんできやすいようです。

だから、動きながら考える。
少し動いてから、またちょっと考えてみる。

ちょっと動くと、動く前に見えなかったことが不思議と・・見えたりします。

動く前にいくら考えても見えなかったことがちょっと動いた時に、ふっと見えたりする。

だから、時には立ち止まって考えることも大切だと思うのですが、本当に大事なことは、まず動いてみるということなのかも知れません。

動きながら考えた時、立ち止まって考えても浮かんでこなかったことが沢山、浮かんでくることがあるからです。